2023年OSPカンファレンスvol.2 -slido回答編・前半-
「外国人材の雇用を通して多様性と共創を考える」をテーマに、9/22に開催されたOSPカンファレンスvol.2。
当日は、多くの参加者の方からテー マについて興味ご関心をいただきました。また、会場でもslidoを使用し、色々な質問や意見を募りました。
今回は、そのslidoに寄せられた質問やご意見に対して、当日ゲストのお三方にそれぞれの立場からの回答をいただいたので公開いたします!
テーマ1:外国人人材を取り巻く雇用環境、生活環境などの現実はどうなっているか?
Q.1 勉強不足で恐縮ですが、日本の難民申請の数が海外と比較して少ない理由はなぜでしょうか。

制度上の課題、手続き上の課題があると言われています(https://www.refugee.or.jp/refugee/japan_recog/)
これに加えて、政治的意思というのがあると私は感じます。ウクライナ避難民の受け入れに際して、首相トップダウンで受け入れる方向性を決めた際には、上記2つの課題は特例を作る形でクリアできたことを見ても、日本として難民問題にどう向き合うかを正面から議論することは求めら れると思います。
Q.2 企業における外国人人材の採用支援の取組みが世界的な問題解決に繋がることは理解できました。他方、企業側からすると「専門性」がないと、採用するメリットを見出せないようにも思いました。勉強不足で恐縮ですが、難民認定を待っている外国人人材のうち、事業に役立つ「専門性」を有している方の割合はどの程度ですか?

「「専門性」がないと、採用するメリットを見出せない」とは思いません。ある調査によると「ダイバーシティ&インクルージョン戦略を重視している企業ほど「働き方の効率化・生産性向上」「エンゲージメント向上」に効果を感じている」そうです。一般的に、チームのメンバーが多様化すると、はじめは効率が落ちるものの、徐々に向上し、多様性のないチームを追い越すとも言われています。単一的なメンバーのチームは確かに心地よいですが…。
私も授業で、外国人と日本人の混合チームでプロジェクトを行いますが、毎回、多様性のあるチームならではの発想や行動がみられて、感心してます。

「事業で役立つ専門性」を、外国人に来てほしい企業がどう定義するかにもよると思います。日本の入管の制度の中での「技術・人文知識・国際業務」に当てはまる業務が何かというのは、在留資格の一覧を見ていただけたらと思うのですが、それぞれの企業が求める専門性・経験・技術は、企業ごとに異なります。
ちなみに、難民申請者全体ではなくWELgee Talentsのキャリアプログラムに登録している人たちの中には、8割ほどが大卒レベルの学歴を持っていて、職歴がある方は6割ほどです。(参考 https://welgee-talents.jp/faq)

人材個々で背景や専門性も違ってくると思います。
特定技能外国人であれば、特定の産業分野で必要な最低限の日本語、業務知識を確認する技能試験を合格しているので、言語と専門性の担保はされています。
Q.3 会場でも感じますが、日本人の英語力不足も影響していると思いますか?

英語力そのものというより、外国語や外国人への苦手意識が問題でしょうか。自動音声翻訳の技術も進んでいるので、思い切って自信をもってコミュニケーションしてみれば、意外とどうにかなるケースもあると思います。
私は、英語で話しても、その人の価値観についていけず、付き合うのをやめた外国人もいます。最終的には言葉より人間性ですね。

日本の学校では主に「読む書く」がテストでも評価されるので「まず目の前の、第一言語が違うもの同士でコミュニケーションをとってみる」の練習・訓練ができるようになると変わってくると思います。

語学を基準に考えたとき「誰に合わせるか」ではなく「業務遂行能力があるか」を基準にした方がいいと考えています。 例えば、特定技能外国人であれば就労の現場は主にサービス業でもあるので、社内でのコミュニケーションが英語であっても、サービス受益者(顧客)は日本語でのコミュニケーションを求めています。
誰かが誰かに合わせる→双方で努力し伸ばしていく。という視点でなければ、持続可能な取り組みにはならないでしょう。
Q.4 沖縄県は、海外展開されている中小企業も少なく外国人材雇用への理解がまた少ない状況です。企業として人件費が下がる以外の、雇用によるメリットや成功例などはあるのでしょうか?(直接的な言い方ですが、メリットがないと動けない)障害者雇用、平均賃金向上で企業経営は厳しいです。

特定技能人材と高度人材で位置づけは変わります。特定技能は、近い将来に圧倒的な人材不足になり、緊急に必要とされている人材です。賃金を下げるどころか、今後は奪い合いになっていくと思います。
一方、高度人材は理系分野などで高い知識やスキルを持った人材で、こちらも実は不足していきますが、たとえば介護どのように、現実的に困った状態ではないので、まだその大切さに気づけていないのだと思います。

WELgee talentsでも、国籍によらず、同じ業務の中では同じ待遇を基本としています。基本的には「人件費が下がるので検討してください」というコミュニケーションはとっていません。人件費を下げるための施策は別で思考した方がいいかもしれません。

人件費が下がる以外のメリット。
という事は、外国人材雇用によって人件費を下げることができる!ことを想定されているのでしょうか?
人種を問わず、人材を採用し育成していくには「必要な投資」が発生することを前提に外国人材雇用を検討頂きたいと思います。
Q.5 外国人受け入れに適している企業の規模感はありますか?沖縄に多い中小企業でも受け入れができるんでしょうか?

パネルディスカッションで紹介した「中央建設コンサルタント」は中小企業ですが、非常に柔軟に受け入れをなさっています。

これまでの採用割合・活躍実績は以下の通りです。中小企業さんでも、いいトライアルが始まっています!
採用企業の従業員数/10人未満:15.6%, 10〜299人:56.3%, 300〜999人:9.4%, 1000〜5000人:3.1%,
5000人以上:15.6%

弊社の取り扱い実績の中では、企業規模は全く関係ないといえます。
Q.6 私が勤めている企業を含め、企業によっては、業界内の専門用語や、ある程度の日本語スキル等がどうしても求められる業界があるのではないかと思います。沖縄だと方言等もあり、言語の壁というのが大きくなってくるのかなと感じますが、難民の皆さんは申請を待ちながらどこかで日本語を学習する機会が与えられているのでしょうか?

たとえば北欧のように、移民が無料で適切な教育を受けられるような体制は、日本にはありません。
今後、本格的に移民受け入れるのであれば、早急な制度の構築が必要ですが、そうはならないだろうと思います。

おっしゃるように就職活動の前の段階、もしくはキャリアプログラムの中での日本語の底上げは、採用確度に直結するため、WELgeeでも今年度から外部の日本語学校と連携しています。
現在、政府がそれを提供しているわけではありませんが、企業が、採用後の言語トレーニングとして難民に限らず企業の中にスキル向上研修として導入するなども可能だと思います。

おっしゃる通り、日本社会において「日本語を学ぶこと」からは逃れられないことだと思います。
『誰かが誰かに合わせる→双方で努力し伸ばしていく』という視点でなければ、持続可能な取り組みにはならないという観点から、日本語学習機会を創り、そこに外国人材を巻き込むことが今後重要かと思います。
Q.7 英語力のみならず、多様な文化を持つ人を受け入れる素養が育っていないこともあるのではないのでしょうか。
どうしたらその部分が育つと思いますか?また、企業では多様な文化を持つ人を雇用するにあたり自社の社員に向けた教育などやっていらっ しゃるところはあるのでしょうか?
